Straysheep 前

※某少女マンガのパロです。
私立のお金持ち学園にあるホスト部の話。元ネタの都合上年齢が異なってたりします。(忍足’sがリョーマと同学年等)
関西弁は相変わらずフィーリングです。すみません。
序盤の書きたい場面だけ書いてるので飛び飛びです^p^ 


上流階級に属する子息が集まる氷帝学園。
そんな学園内で特待生という立場の越前リョーマはある意味で有名人だった。
大多数が所謂金持ちに分類される中では庶民というのは珍しいらしい。
静かな場所を求めて運悪く迷い込んでしまったホスト部なんて学生らしからぬふざけた部活で個性豊かなメンバーに絡まれたリョーマは、酷く困惑していた。
「噂の特待生に男色の趣味があったとはな。アーン?」
中央で踏ん反り返る一番偉そうな男の台詞も正直理解出来ない。
男色って何だ。否、意味は分かるけど。
そう思ったところで勘違いされかねない状況と自分の見た目に納得して、足早に部屋から出ようとする。
「部屋間違えただけなんで」
これ以上関わりたくない。
「待てよ。コイツ等の中に好みの奴が居ないってなら、この俺様はどうだ?」
後退るリョーマの顎を捉えた男が甘い微笑を以て囁いた。
普通の女子ならば心動かされるだろうそれもリョーマにとっては効果は無く。
「間に合ってるんで、結構っス」
勘弁してくれと更に後ろに下がろうとした瞬間。
「うわっ!」
背中に感じた何かにぶつかる感触と共にガシャンっと物凄く嫌な音が室内に響いた。
「あーあ。それ八百万円はする壺やで」
「今度の校内オークションの目玉やったんやけどなぁ」
恐る恐る振り返る先にあったのは、無残に散らばる陶器の破片。
背後からは同級生である双子の責める声。
「あの…弁償」
「「出来る訳ないやろ。指定の制服すら買えんのに」」
ご尤もな意見である。
しかし、全てこちらに非が無いとはいえ結果的に壊してしまったのはリョーマだ。
金額が金額だけに謝って済むとは思わないが、分割とか出世払いにしてもらうことは可能だろうかなんて考えていると。
「どないするん跡部?」
跡部と呼ばれたあの男は、リョーマと壺とを見比べてニヤリと非常に性質の悪い笑みを浮かべた。
「金が無ければ身体で払って貰おうじゃねぇか。なぁ、越前リョーマ」
「…マジで?」
「他に払える宛があるって言うなら話は別だけどな」
そんなものあるはずがない。
こうしてリョーマはホスト部へ強制的に入部する羽目になったのだった。


* * *


髪の毛もボサボサでレンズの分厚い眼鏡。
指定の制服すら来ていないリョーマは見た目の問題からホストとは使えないと判断され、雑用係として使われていた。
部活動なんて元々所属するつもりはなく、今頃は静かな場所で過ごしていたはずなのにこの状況は何だろう。
楽しそうな女生徒と愛想笑いか本当に笑っているのか分からない笑顔を振りまいて対応するホスト部の面々。
雑務を任される中で自然と目に入る非日常に思わず眉を顰めた。
場違いだ。とてつもなく。
「どうした?」
「何でもないッス。手塚先輩こそ突っ立ってて良いんですか?」
荷物を抱えたままぼんやりと室内の様子を眺めていたリョーマに声を掛けたのは、眼鏡を掛けた寡黙な先輩だった。
「俺は他にも仕事があるからな」
部内の経理など含め細かい補佐は彼が行っているという。
リョーマへ雑用をしろと命令したのは跡部だが、その内容を指示をするのは手塚である。
「お前こそ、部内の人間が気になるのか?」
宛もなく視線を彷徨わせていたことを指摘されて何となくバツの悪い気持ちになる。
「別に」
「ちなみに跡部がこの部のナンバーワン。キングと呼ばれている」
ホスト部に興味などないと言って視線を逸らせば、聞いてもないのに説明された。
「ふぅん。世の中って不思議っすね」
「何が不思議だって?」
「げっ」
正直な感想を述べた途端、タイミング良く現れた男に思わず本音が零れた。
「この俺様がお前みたいなダサい庶民にわざわざ声をかけてやってるのに、何だその態度は。あぁ?」
「…それはどうも」
誰も頼んでいないとはっきり言えたらどんなに良かったか。
リョーマから見た跡部の背後には八百万円の文字が常にチラつき、黙り込むしかない。
「まあ、良い。そんなダサいお前でも少しはマシになるようレクチャーしてやるよ」
「…遠慮しときます」
本当に勘弁してくれ。
こういう類の人間を何と言っただろうか。
目の前で勝手にしゃべり続ける男、跡部にピッタリな言葉。
面倒だとかそういった類のものの中でも特に似合うのは。
「ウザい」
ああ、これだ。
浮かんでは消える言葉の羅列から導き出した答え。
それをハッとして呟いた瞬間、跡部の動きが止まった。
もしかしなくてもダメージを与えてしまったのだろうか。
単なる事実を告げただけなのに。
「あーあ。あの跡部相手に凄いなぁ」
「ほんまお前勇者やな」
いつの間にかリョーマの両脇を固めていた双子の忍足が交互に話す。
跡部があからさまに落ち込んでいる姿を見て楽しそうなのはきっと気のせいじゃない。
「スミマセン。本当は凄く参考になりました」
落ち込む跡部を見てこのまま放置しようと思ったリョーマだが、今は良くても後面倒臭そうだと考えて仕方なく声を掛ける。
ほぼ棒読みの台詞にも関わらず、跡部は簡単に復活した。
意外と単純である。
そして、懲りずにまたリョーマに女の子の扱い方を話し出すものだから今度は外野からツッコミが入った。
「しっかしなぁ…跡部。いくらホストの手ほどきしたってなぁ」
「眼鏡取ったくらいで変わるわけが…」
近くに立っていた双子がリョーマを覗きこんだかと思うと掛けていた眼鏡を外された。
「「……」」
突然訪れる沈黙。
眼鏡を外されたまま二人に顔を凝視され居心地の悪さを感じてリョーマが一歩下がるのと同時に、間から割り込んできた跡部に肩を掴まれる。
「…お前ら其処を退け!」
「何なんすか?」
まだレクチャーとやらが続いているのかと思ったのも束の間。
パチンッ。
跡部が指を弾いたのを合図にリョーマは忍足達に連れ去られた。
「…ちょ、ちょっと!」
そのまま連れてこられたのは更衣室らしき場所。
「じゃあ、これに着替えてな」
「は?」
「「お前に拒否件は無いで」」
「分かった、分かったから!二人とも外出て!」
急な展開に着いていけないまま制服を着替えさせられそうになったリョーマは、慌てて双子を追い出すと真新しい制服へと袖を通した。
更に三十分後。
用意されたコンタクトを装着し、ボサボサだった髪を跡部御用達のヘアメイクに整えられたリョーマの容姿は見違えるものになっていた。
「あの…この制服って貰って良いんすか?」
「当然だ。それにしても可愛いなお前。こうしてると女みたいじゃねぇか」
この人気付いていないのか。
勘違いしているなら敢えて教える必要もないと判断して、リョーマは曖昧に笑う。
「これなら問題ねぇな。お前にはノルマを与える」
「ノルマ?」
借金の次はノルマ。
勿論、嫌な予感しかしない。
「雑用はもう良い。今日からお前は正式な部員だ」
正式な部員って何だ。
「俺が一流のホストにしてやるよ」
そもそもアンタも職業ホストじゃなくて単なる学生だから。
「もし、百人の指名客を集められたら借金は全部チャラにしてやる!」
予想通りというか、ある程度流れから察していたリョーマが然して驚くことは無かった。
八百万円返すのと百人の指名客。
果たしてどちらが自分にとって良かったのか。
結局は大差無いのかもしれないなんて肩を落としながら、リョーマのホスト部デビューが決まった。